「どうして無理するんだか」

保健室のベッドに寝かされた私に和海が言った。

「すいません」

「まあ、どうせ睡眠不足だ。早く寝ろ」

「分かりました」

大人しく目を閉じた。



目を開けると隣に和海がいた。
ずっとここにいてくれたんだろうか。

「今、何時間目ですか」

「もう授業は終わった。代わりに亜矢って子がノート持ってきてくれた」

和海の手には三冊のノートがあった。

「明日お礼言わないと……。和海」

「何?」

「ここまで運んでくれて……あ、ありがとうございます」

「それならご褒美がほしいな」

人が勇気を出して言った言葉に対してそれか。

和海はニヤリと意地悪な笑みを浮かべて言った。

「キス以外で」

「デート」

「はい?」

「だから俺とデートして」

「なんでですか?」

「ご褒美」

「……分かりました。そのかわりテスト終わってからです」

「それまで我慢するか……」

和海のつぶやきは聞こえなかったことにした。