「お願いですから自分の教室に行ってください」

一時間目。和海は私の隣の人が欠席で席が空いていることをいいことにそこに座っている。


ついさっきまで__

「中島くん、自分の教室に行ってもらえるかな?」

3回目も数学の先生が優しく声をかけるが和海は無視だ。

しかも、クラスの女子は和海を見て目をハートにしているのだから先生に同情する。

「嫌だ」

一体何歳児なんだろう?先生に嫌だって言う生徒は。

「中島くん、でもね」

「うるさい。俺のことは無視してていいから」

先生にうるさいって……。

「中島くん、先生困るんだよだから…」

「黙れ」

この声に先生がビクリと震える。

初めて聞いた人を従わせる王様の声。

「先生、もう1回言うよ?俺のことは無視してて」

「わ、分かった。静かにしてるなら特別に黙認するわ」

「うん、ありがと」



__こうして一時間目、隣に和海がいる。

「有紀」

「……」

「俺のこと無視していいの?」

「………何ですか?」

お仕置きというワードが頭にちらついた。

「なんで寝ないの?」

「……授業中です」

「真面目」

「授業中なので静かにしていて下さい」

「はいはい」

ちょっと不機嫌そうな返事がして、一時間目が終わった。