「これが原因なの?」

和海の目は獲物を見つけた獣の目だ。

「鈴木晴香って女」

殺気まである。

「俺が浮気したみたいなメールを有紀に送り付けてただで済むと思ってんのかな」

クスっと笑う和海の顔ほど怖いものはない。

「俺が浮気したと思ってたのが原因?」

私は半ば呆気にとられながらゆっくりと頷いた。

こんなことでバレるなんて馬鹿だ。

「このことを俺に相談出来なかったのか?」

またゆっくりと頷く。

「ごめん。俺が気づいてやれたら有紀をこんなふうにさせることなかったのに」

和海は私をぎゅっと抱きしめた。

「ごめんな」

和海の声が心にしみる。

「俺、そいつに脅されて一回一緒に出かけた」

腕くんでたのはそのとき?

「そん時に写真撮られたけどそれっきり何も言ってこなかったから大丈夫だと思ってた」

和海が後悔しているのが分かった。

「早くつぶしておくべきだった」

優しく、物騒なことを言った。

「俺も甘いな」

そう言って不敵に笑う和海を見ているとこの世に和海ほど怖いものなんてないように思える。