今日の私、運勢最悪。人生初のお客さんはあのナンパ男だった。

「おっ、お前オレのこと睨みつけた奴じゃん。そのせいでオレ昨日できなかったんだぜ」

ピッ、ピッ。

何が?とはもちろん聞かない。

「おい、無視かよ。今日は付き合えよ」

ピッ、ピッ。

「1390円になります」

ナンパ男は財布を出さない。

「今日付き合うってんなら、倍払ってやるよ」

ニヤニヤした顔をしながら言ってくる。

「1390円です」

「おい、聞いてんのか」

「1390円です」

「なめたまねすんなやっ!」

キレた。

口元に笑みを浮かべる。私だって、昨日のやり返しがしたかったのだ。

「おいっ、表に出ろ」

「分かりました。私が勝ったらお金払ってくれますか」

「ああ、いいぜ」

ナンパ男は顎でレジから出るように言った。

「おい、昨日の今日でこれか」

中島先輩が私の後ろに来て言った。

「げ、中島かよ。ついてねぇ」

そういって、ナンパ男は2000円置いて店から出て行った。

「はぁ」

あの顔面を一発殴りたかった。

「何か言ったか?」

「いえ、何でもありません」

「それよりもお前が喧嘩を買ってどうする」

「すいません」

「反省しろ」

中島先輩はレジに戻った。