可愛いピンクのドレス。

大きなお城。

白馬の王子様が私のもとにやってくる。
そして私の手を取ってこう言うんだ。

「____」
「…なんて?」












チリリリリリリリリ。

目覚ましの音に目が覚める。

私、瀬戸 みをり(16)は前世の記憶を持っている。はっきりした記憶ではないけどこれは確かに前世の記憶。毎晩夢で見るのは同じ場所、同じ人、そして同じ時代。大きなお城に住んでいるピンクのドレスを着た少女が前世の私。そしてとってもイケメンな少年が私の王子様。前世の記憶にしてはあまりにも理想的で現実離れしてるけど、本当にこれはただの夢じゃない。だって私は知っている。



この夢の結末を________。




今日の夢と今までの夢を照らし合わせて整理しながら私は学校の準備をした。
「確かに王子は何か言ったのに」
夢の内容は全て覚えてるし、夢に出てくる人たちの顔も全て記憶に残っている。なのに今回の夢で王子に言われたセリフがどうしても思い出せなかった。もしくは聞こえなかったのかもしれない。
「王子、なんて言ったんだろ」
モヤモヤした気持ちのまま私は家を出た。
「みをり!」
家を出るとそこには、
「なっちゃん!」
春川 菜津の姿があった。
「私のこと待ってるなんて珍しいね」
なっちゃんこと春川 菜津は幼稚園からの幼馴染み。そして唯一私の前世の記憶の話を信じてくれる存在。
「いやぁ、今日は早く起きられたからみをりちゃんと一緒に行こうと思って!」
なっちゃんは超が3個くらいつくほどのお寝坊さん。だからこうやって2人で歩いて学校に向かうのなんてめちゃくちゃ珍しい。
「今日はどんな夢だった?」
「えーとね、お城のお庭で遊んでたら王子様が迎えにきてくれたの」
「きゃー!素敵!2人でどこに行こうとしてたのかな?」
「それが…わからないの」
今日の夢は一見楽しそうだったけど、なんだかそうじゃない気がする。本当はとても怖い夢のような…。
「何?また夢の話?」
「__し、柴田くん!?」
考え込んでた私の目の前に現れたのは柴田 爽くん。私の憧れの存在。
「柴田くんは信じる?前世の記憶とか」
「や、やめてよなっちゃん!」
なっちゃんが面白半分に柴田くんに質問した。
「持ってる人もいるらしいね。本当かどうかは知らないけど」
そう言って笑いながら柴田くんは先に行ってしまった。
「柴田くんに変に思われたらどうしよ…」
「大丈夫だって!別にみをりちゃんが前世の記憶ありますって言ったわけじゃないんだし」
それはそうだけど…。柴田くん、勘が鋭いから心配だな。
「それより今日の1限葉山の授業だよ〜。本当ありえない」
「最後に受けるよりマシよ」
葉山は数学の先生。生徒からすれば嫌いな数学と嫌いな葉山がダブルで攻撃してくる授業は苦痛でしかない。でもそんな苦痛、今日の私にはどうでもよかった。だって夢の王子が言ってた何かが気になりすぎて私の脳のほとんどを支配してたから。
「これがただの夢だったらな〜」
これがただの夢だったら柴田くんの顔を見ただけで忘れてたと思う。
でもこれは前世の記憶。
私の大事な過去のお話。