海へ



 電車をいくつか乗り継いでバスにも乗って海まで来た。
 砂浜をサンダルを脱いで素足で足跡を付けながら歩く。
 この時期は夏休みだと言うのに、人が少なかった。
 昼間から二人っきりでこの海を楽しめるなんて事はそうそうないだろう。



 こんな状況じゃなければ……



「風、気持ちいいですね
 それに潮の香りもしっかりします」
「…………」
「周りに人が居ないから貸し切りも同然ですね」
「…………」
「海も青くて凄く、綺麗です」
「…………」
「入ってみたくなりませんか?」
「…………」



 柔らかく微笑む凪を見てどうしても思い出す。
 海に来たのなんて、いつぶりだろう。
 凪といつか海に行きたいねって約束して最初に来たのは――――…………