再会



 お母さんが作ってくれた夕飯を無視して、時計の秒針の音が目立つ暗い部屋の中泣き疲れた体を仰向けに横たえながら長い沈黙を経て今更ながら自覚する。



『私、こんなに凪の事……好きだったっけ?』



 水乃ちゃん!
 柔らかく、優しい笑顔で私に笑いかける凪を思い出してしまいまた涙が滲む。



『あぁ……うん
そっか……失って初めてってやつか……』



 ようやっと出した私の声は先程まで泣き叫んでいたせいで喉でも潰れたのか、声もしゃがれていたし、凪を思い出しては涙が滲むので、声が震えた。
 時計の秒針の音を聴き続けてどのくらいたっただろう……。
 時計の音なんて気にしてる余裕なんて無いぐらいの事が起きた。



『……ちゃん』

『?』

『水……ちゃ……聞……え……?』

『えっ?』

『水乃ちゃん……見えますか?』

『な……』



 凪の声が聞こえた気がする……。
 いや、姿すら見えてる気がする。
 思わず私は勢いよく起き、確認する様に呟く。



『な……んで……』



 さっき涙も渇いた筈なのに、また涙がじんわりと溢れてくる。
 凪……会えた。



『え、えへへ……』



 誤魔化す様な笑顔が凪らしい。
 凪の幻影なのだろうか……。
 それとも……。



『凪……なんで……』

『え、えっとね……』



 どこから説明すれば良いでしょうか……。



 そう言う凪を見ていて、幻影だとしても凪が見えてる事に変わりは無いと、そう思ったら涙が止まらなくなって……無性に抱き締めたくなった。