届かなかった想い



 全開にした窓から蝉の鳴き声が聞こえる……。
 あぁ、今は夕方か。
 周りなんて見てる暇無かったから気付けなかったや。
 そういえば、夏休みに入ってからそんなに日は経ってない……様な気がする。
 私は、暑いのも構わず扇風機も着けないでベッドにへたり込んでいた。



『水乃……』



 お母さんの声が聞こえた。
 扉のノックの音にも気付けないぐらい落ち込んでたらしい。



『…………』

『まだ、凪君の事……』

『そうじゃない』

『お母さんこれから買い物行くけど、欲しい物ある?』

『無い』

『分かったわ』



 お母さんが扉を閉めた途端に込み上げる物があった。



『……っっ!!』



 込み上げる涙と感情を近くにあったクッションに押し付けて声にならない声で叫ぶ。



『凪の……馬鹿!』