『伊吹……お母さん、置いてきちゃっていいの?』
伊吹を見ないでそう言う私。
『うん。お母さんには先に部屋に帰っててもらうから…………』
『なんで?行きなよ。』
冷たく言い放つけど、伊吹が行く気配はない。
黙って私のそばにいる伊吹。
それだけで………その優しさだけで………
もう涙が出るのには十分な理由だった。
気づいたら大粒の涙を流す私をぎゅうっときつく抱きしめてくれる伊吹。
『い、やだ…………おかあ……さん………』
その言葉を繰り返し、ひたすら泣く私をずっと優しく包み込んでくれた伊吹。
私が伊吹を慰めるはずなのに、今は立場が逆転していた。
どれくらい泣いていたのだろうか。
やっと落ち着いたところで、伊吹は私に語りかけた。