病室の外に出て、頭が追いつかないままゆっくりと廊下を歩く。
すると向かい側から歩いてくる…………
伊吹の姿を私は見つけた。
伊吹を見つけたらなんだか涙が出てきそうになった。
だけど…………
伊吹は点滴と繋がれたお母さんであろう人と一緒に歩いていた。
だから邪魔はできない、とこんな時でさえ冷静に判断を下してしまう自分が嫌になる。
そしたら向こうが私に気づいて
「結衣ちゃん!」と笑顔で言った。
私も笑顔で返さないと………
笑え、自分。
だけど顔の筋肉が固まったみたいに動かず、その時の私の作り笑顔は相当ひどいものだったと思う。
ダメだ、1人になろう。
そう思って私は来た道を歩いて、反対側の階段を利用しようと思った。
なのに………
伊吹は走って私の元へとやってきた。



