………お母さんが亡くなって、お父さんが焦って病室に入ってきた。
そしてベッドの上で眠るお母さんの手を握りながら、私を抱きしめるお父さん。
『辛かったな。』『ごめんな。』
それはどちらに向けられた言葉かはわからなかったけど、お父さんの声は弱々しかった。
正直とてつもなく悲しかったし、苦しかったし、闇に包まれたような気さえした。
だけどなぜか、涙は出なかった。
お父さんが心配そうな顔で私を見るけれど、私は大丈夫と言った。
本当は大丈夫なんかじゃないのに。
お父さんは一度、外に出ておいでと私に言った。
多分私を心配してくれてのことだろう。



