彼は死んだ。
私の中の彼は死んでいたのだ。
桜が満開で、目の前にカメラを構えている彼。
かしゃりと音を鳴らして、レンズ越しに私を見ていた彼は顔をあげて、一言溢す。
「大庭先生、表情が固いです」
撮り直し、と言わずにこれも思い出だと彼は満そうに今日撮った写真のデータを眺めていた。
彼は私に小学生に戻ったような幻覚を起こさせる。
「高嶺くん」
「何ですか、先生」
彼は小さく頭を横に傾ける。また、彼の重なった。
「写真のコンクール用の写真は良いのとれたの?」
「まだ。なんというか、ぴーんと来ないっていうか。まだこれだーって思うのが撮れてないんですよね」
「私なんか撮ってないで、そっちを優先したらいいのに」
「息抜きです。息抜き。僕、風景より人を撮る方が好きだし。先生、もう一枚お願いします。次、花壇で撮りましょう」
「はいはい」
高嶺くんはご機嫌に裏庭にある花壇を目指して歩き出す。私はそれに懐かしさを感じながら、あとをついていく。

