「松田!」
「……松田?」
橙輝が呟いた言葉を復唱する。
松田って誰?
友達?
橙輝は玄関まで走って
家のドアを開けた。
すると明るい声が聞こえてきた。
「よっ!ちょっと
雨宿りさせてもらえねぇ?」
「いいけど……お前、今
タオルやるから拭いてから上がれよ?」
「おう、サンキュー」
二人の会話に聞き耳を立てて聞いていると、
ドタドタと足音が近づいてきた。
「あ、松田。ちょっと待っ……!」
橙輝の焦った声が聞こえ、
あたしにも状況が把握出来た。
友達が来てるんだ。
そして多分、それはあたしらと
同じクラスで、
あたしがここにいると色々とまずいんじゃ……。
急いで隠れようと後退した時、
無情にも扉は開かれた。
松田くんらしき男の子が立っていて、
ばっちり見られてしまった。
しかもパジャマ姿のまま……。
これじゃあ言い訳も思いつかない。
松田くんの後ろに橙輝の姿が見えて、
あたしは目で助けを求めた。
橙輝も眉間に皺をよせて目を閉じている。
これはまずいよね。
とてつもなく。


