「怒るなよ。悪気はない」
「悪気がないなんて、すごくタチが悪い!」
「あ、あそこに行くか」
「人の話を聞きなさいよ!」
橙輝はあたしの手をつかんだ。
そうしてゆっくりと歩き出す。
どこに行くっていうの?
しばらく黙って歩いていると、
橙輝は口を開いた。
「着いた」
「ここって……」
着いたのは小さな公園だった。
ブランコと、滑り台しかない小さな公園。
橙輝はブランコへと走ると、
二つあるうちの右側に乗った。
つられてあたしも左側に座る。
橙輝は子どものようにブランコをこぎ出した。
どうしてここに来たんだろう。
高校生のあたしたちじゃ、
遊ぶのには少し場違いな気がするけれど……。
「橙輝ってさ、思いつきで人のこと振り回すよね」
「そうか?」
「海に行ったのも思いつきでしょう?」
「海は、百瀬に初めて会った日から
行くことに決めてたよ」
「えっ?」
「言ったろ。お前は麻美に似てるって」
ドクン、と胸の奥がざわついた。
また、橙輝はそんなことを言う。
どうして?
そんなに似ているの?
あたしはどう映っているの?
橙輝は何を思っているの?


