橙輝の一言が、
あたしの胸を貫く。


そんな、そんな結末……。



「事故だった。麻美は、俺を庇って……」




当時、橙輝は初めての反抗期で荒れていた。


家に帰らないことも多くあり、
よくパパを困らせていたという。


母親がいないことも影響したのか、
橙輝の反抗期は止まらなかった。


それに加え、絶対に叶うことのない禁断の恋。


橙輝の心は荒んでいった。






その日も、学校をサボり、
街中を歩いていた。


その時橙輝はヘッドフォンをしていて
音楽を聴いていた。


そんな橙輝は気づかなかった。


後ろ手に暴走した車が迫っていたことに。


キキっと耳を劈くような音が微かに聞こえた時、
橙輝は誰かに身を押されて転んだ。


驚いて顔を上げると。


そこには女の子が倒れていた。


見慣れた中学の制服を着ていた
その少女こそが、麻美さんだった。




「即死だった。麻美は、
 俺が十三歳の誕生日の日に、
 亡くなったんだ」





葬儀の日、橙輝は悔やんだという。


自分の愚かさに。


その日は、離婚した母親も顔を出していた。


久しぶりに会った母親は
ものすごい形相で橙輝を睨みつけた。








『人殺し!あんたなんか産まなきゃ良かった!』