鳴海麻美という女の人は、
橙輝の実の姉だという。


今までそんな話、
一度も聞いていなかった。


驚きが大きすぎて唖然とする。





麻美さんは、二つ歳の離れたお姉さん。


天真爛漫な彼女は昔から気は強くて、
責任感も持ち合わせた女性だった。


そんな麻美さんの誰よりも近くにいたのが橙輝だ。


橙輝は小さい頃から麻美さんを慕い、
中学に上がるまではお風呂も一緒に入っていたくらい。









けれど、その幸せな暮らしは一瞬で崩れた。







「俺は、中学に上がる頃になって
 気付いたんだ。自分の気持ちに」


橙輝が中学一年に上がった頃、
彼女は中学三年だった。


一段と素敵な女性になっていった彼女のことを、
一人の女として意識するようになったという。


「それで……今は?」


「今はもう……想いも告げられないし、
 二度と顔を合わせることもない」


「えっ?」








「麻美はもう、亡くなってるんだ」