「梓?」


「お、とう……さん?」


「どうした?何かあったか?」


優しく問いかける父の声に、
思わず涙が出そうになる。


お父さんだ。


久しぶりに聞くお父さんの声だ。


しんと静まり返る中、
あたしは無意識に橙輝の手を握りしめていた。


「どうした?」


「げ、元気?」


「ああ。元気だよ」


「仕事は?」


「いつも通り。ちゃんと仕事もしているさ」


「お、お父さんは、再婚……しないの?」


一番聞きたくない、そして一番
聞きたかったことを絞り出すように問う。


するとお父さんは、ははっと笑った。


「するわけないだろう」


「で、でも……」







「私には、お母さんと梓が大事だからな」