SKETCH BOOK




何を言っているの?


これは夢?


ぼうっとしていると、部屋の中に
流れる洋楽だけが耳に響いていた。


誰が誰と出かけるって?


「な、なんで……」


「九時になったら出かけるから、空けとけよ」


「え、あの、ちょっと……っ」


橙輝はそれだけ言うと、
部屋を出て行ってしまった。


自分の部屋だというのに、残されたあたしは
なんだか居心地の悪さを感じた。


何?


なんで?


なんで出かけることになったの?


「土曜日……かぁ」


ふと思い立って、
クローゼットの中を漁った。


手当たり次第服を引っ張ってきては
鏡の前に立つ。


何してるの?


これじゃあまるで、
出かけるのが楽しみみたいじゃない。


改めて不思議に思う。


橙輝はどうしてあたしを誘ったの?


この間の罪滅ぼし?


それともただ単に誘ってみただけ?


妹として。


それか、荷物持ち?




「荷物持ちが一番しっくりくる……」


呆れてそのままベッドに倒れ込んだ。


「妹、かぁ……」


そっと呟くと、頬に熱いものが伝った。


それを手の甲で拭ってやると、
キラキラと小さく光っていた。


モヤモヤする。


納得がいかない。


このままあたしはずっと
モヤモヤしたままで、約束の土曜日を迎えた。