SKETCH BOOK




乳房を優しく包まれて、
その突端をつままれる。


何度かそれを繰り返しているうちに、
痛痒かったものがだんだん気持ちよく思えてきた。


「同じ屋根の下に男がいるんだ。
 ちょっとは自覚しろよ。バカ」



言葉が落とされると、
するりと橙輝が離れた。


あたしはその場で、
へなへなとへたり込む。


橙輝は嘲笑うかのように
あたしを見下ろしていた。


「今度からは気をつけろよ。百瀬」


ピシャンとドアが閉められた。


しんと静まり返る。


奥の方で、トントンと
階段を上がっていく橙輝の足音が聞こえた。


バタンと、橙輝が部屋に入った音が聞こえる。


するとその拍子に、涙がポロリと零れ落ちた。


「なん、でぇ……?」



自分の体をきゅっと抱きしめる。


触れられた場所が熱い。


橙輝はどうしてこんなことをしたの?


それは分からない。


分からないけれど、分かってしまった。










『気持ちが変わってくることもあるんだし』








百合の言葉が思い出される。


そう。変わるんだ。


ほんの些細なことで。


あたしは……あたしは橙輝のことが……。