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カチャっと扉を開けると、
冷たい空気が流れていた。
橙輝、いないのかな?
「ただいま~……」
そっと呟くと、自分の声が空気の上を飛ぶ。
濡れた靴を脱衣所に押し込んで制服を脱ぐ。
雨でベトついた服を脱ぐと、
解放感に包まれる。
濡れた髪をタオルで拭くと、
ガチャッと音がした。
え、扉開いて……?
「き、きゃあ!」
「あ?」
慌てて手で身体を隠す。
扉の向こうに立っていたのは、
紛れもなく橙輝だった。
「早くし、閉めてよ!」
「……なにやってんだ?」
「何って!お、お風呂に入ろうと……ぅ」
「何をそんなに騒いでるのかって聞いてんだよ」
な、この人は何を……?
人の裸見ておいて何を堂々と……!
橙輝はつまらなそうな顔をして立っていた。
あたしの裸を見ても眉一つ動かさない。
この人、一体どうなってんの?
「い、いいから早く出て行ってよ!」
体中に熱を帯びる。
鏡に映る裸の自分と、その横に
立ち尽くしている橙輝。
改めて見るととても恥ずかしい。
ぎゃあぎゃあ騒いでいると、
橙輝がニヤリと笑った。
「照れてんのか?裸見られたくらいで」
「く、くらいって……一大事でしょ!」
「ふーん。俺がお前の裸見て興奮するとでも?」
はい?この人、何言ってるの?
「言っておくけどなあ、俺は女の裸なんて
見飽きたくらいだ。今更何も思わない」
「は、はぁ?」
「それともあれか?
お前、俺を誘惑してんのか?」
「な、何言って……」
「お前に俺が落とせるとでも?」
この人、何言っても通じない。
危ない。
早くここから抜け出さないと……!
「ほらどうした?本気で抵抗しないと
最後までいくぞ?」


