「はぁ。あんたって馬鹿?
勿体ない!せっかくのチャンスが
巡ってきたっていうのに!」
「なによ、チャンスって」
「彼氏作るチャンス!もう。
こういうことは先にあたしに言いなさいよね」
百合に話したところで、あたしと橙輝が
どうこうなることはないと思うけど。
しばらくすると苺のパフェが運ばれてきて、
百合は息継ぎをするようにパフェをほおばった。
「で、今に至るわけね。家族になるけど、
血は繋がっていないから結婚は出来るわね」
「なっ、け、結婚って!
あるわけないでしょうそんなこと!」
「あら。充分あり得るわよ。
今はそうでも、
気持ちが変わってくることもあるんだし。
鳴海くん、イケメンだしさぁ!」
確かに、橙輝は普通にかっこいい。
イケメンという部類に位置している。
その上頭も良くて絵も上手い?
何それ。最高すぎるでしょ。
橙輝じゃなかったら今ごろ
恋してたっておかしくはない。
問題はそれが橙輝だってこと。
「橙輝はむかつくんだよ。何しても腹立つ!
だからそんな間違いは絶対起きない」
「間違いじゃないでしょ。
普通のことだよ。あんたが
鳴海くんに恋するっていうのは」
「あり得ないから。ほら、もう
話も終わったし、食べ終わったら帰ろう?」
鍵がないと言った橙輝を思い出す。
今頃橙輝は一人で、家にいるのかな?
また、絵を描いているのかな?
「じゃ、また面白い話聞かせてよ?じゃあね!」
「はーい」
百合と別れて、一人家までの道を歩く。
次第に雨が降ってきた。
慌てて、小走りで家へと急いだ。
こんなに降ってくるなんて
天気予報じゃ言ってなかったのに!
もっと早めに切り上げていればよかったと後悔する。
急いで家へ着く頃には、
あたしはもうずぶ濡れの状態だった。


