何よ。
学年一位だからってその態度。
あんたこそ真面目に授業聞きなさいよ。
橙輝のことを思うと腹が立つ。
イライラして仕方ない。
あれから一ヶ月。
日を追うごとに橙輝の憎たらしさは
ひどくなっていく。
何かあら探しをしようとしても、
橙輝は一切の隙も見せない。
代わりにあたしがからかわれて
終わりになってしまう。
いつかあいつの化けの皮を
剥がしてやりたいのに。
橙輝について分かったことは、
一ヶ月前とさほど変わらない。
一つ分かったことと言えば、
絵の話になると顔を小さく歪めるってことだけ。
そんなに苦しいのか、絵を描くのは。
だったらやめてしまえばいいのに。
それも出来ないのはきっと、
あの絵に描かれている女の人のせい?
絶対そうだと思う。
結局、今日も橙輝は
滅多に授業には出なかった。
橙輝が顔を見せたのはお昼の時と帰りの時だけ。
それ以外はきっと、
あの空き教室で絵を描いているんだろうな。
「梓!久しぶりに一緒に帰らない?」
「百合!いいよー」
百合があたしのクラスに顔を出した。
荷物を持って、教室を出ようとすると、
橙輝に腕を掴まれた。
「な、なによ」
「……寄り道して帰るなら、鍵を置いていけ」
「何?あんた鍵持って出なかったの?」
「忘れたんだよ。いいから早く出せ」
「……はいはい」
ため息をついてカバンをあさり、家の鍵を出す。
橙輝の机に置くと、橙輝はその鍵を握りしめた。


