「で、どうする?橙輝くん」


「どうすんのよ」


「食べるよ!……いただきます」


お母さんに頭を下げた橙輝は、
ドスドスと足音を立てて自室に入った。


まったく。


短気なのはどっちよ。


ちょっと寝ぼけただけなのに。


「梓ちゃん、今度の日曜、
 みんなで出かけないか?」


「えっ?」


パパがにっこり笑って言う。


お出かけか。


それもいいかもね。


でも……。


「あいつも一緒?」


「ああ。あいつは嫌いか?」


「嫌いじゃ、ないけど……
 だってあいつ、意地悪なんだもん」


頬を膨らませてそう言うと、
パパは大きく笑った。


パパと橙輝は似ている。


そっくりな顔を見ていると、なんだか
橙輝を見ているみたいで不思議。


絶対に笑わないあいつも、
笑ったらこんな顔をするのかな?


そんなふうに思っていると、
パパが心配そうにあたしの顔を覗いた。


「梓ちゃん?大丈夫?」


「だ、大丈夫!」


慌てて返事をすると、
お母さんはふふっと笑った。


「お鍋、すぐ出来るから。あんたは
 橙輝くんと遊んでらっしゃい」


「遊ぶって……もう高校生なんですけど」


「高校生なんてまだまだ子どもよ」


「はいはい」