いつの間にか、橙輝が
ドアの前に立っていた。
カバンとスケッチブックを持っている。
橙輝は驚いたようにあたしを見つめて、
それからすぐに視線を落とした。
橙輝も机に向かって歩いてくる。
席に着くと、荷物の整理を始めた。
「……それ、終わるのかよ」
「ああこれ?ダメ。
終わんないよこんなの!」
「どれ?」
「ん!」
プリントを橙輝の目の前に押し付けると、
橙輝はふうんと一つ頷いて、
それからペンを取り出した。
「ここはこっちじゃなくて
この公式を使って解くんだよ」
「へえ。ここは?」
「お前、ここ計算間違えてる」
「え、うそ!」
瞬間、手と手がぶつかり合った。
びくっとして思わず顔をあげると、
橙輝も顔を上げていて、
気付けば二人は近い距離にいた。
ドクンと胸が高鳴る。
夕暮れの教室で、こんな風に
男の人と一緒にいるなんて、考えられない。
それでも、今この状況は
夢なんかじゃなくて……。


