SKETCH BOOK




「なに?」


「いいじゃん。ここで食べれば?
 邪魔しないし」


「……そうか」


橙輝はしばらくの間を置いて頷いた。


あたしと離れた席に座ってパンを食べ始めた。


あたしもその横でパンを食べる。


横目でちらりと橙輝を見ると、
ケータイをいじっている横顔が映った。


二人で特に話すこともなく、もくもくと昼食を食べる。


食べ終わって橙輝を見る。


橙輝はヘッドフォンをしていて、
ケータイをいじっていた。


しばらくその横顔を見ていると、
橙輝は溜息をついた。


「あのさぁ、終わったなら教室に戻れよ」


「いやよ。別にここにいたっていいでしょ?
 邪魔したいわけじゃないし
 あたしなんか気にしないでどうぞ続けて」


「……ったく。お前って結構頑固なのな」


「は、はぁ?」


「ほら、すぐ怒る。頑固で短気。
 それがお前だろう?」


当たっているような気もする。


でも、頑固はないでしょ!


視線で抵抗したけれど、呆気なく
交わされてしまった。


橙輝はケータイを閉じて、席を立った。


「お前が出て行かないのなら、俺が出ていく」


「なんで?もうちょっといようよ。
 あたしたち、兄妹になるんだし」


「それとは関係ないだろ」


「えっ……」


「とにかく、学校ではあんまり
 話しかけてくるなよ。ただでさえ
 家の中で一緒にいるのに、
 学校でまで顔を合わさなきゃいけないなんて
 窮屈すぎる」


「それ、あたしに喧嘩売ってる?」


橙輝はスケッチブックを広げて
また何か描き始めた。