SKETCH BOOK




✻ 

昼休みになって、席を立つ。


財布を持って一階の購買に向かった。


購買は人でいっぱいになっていて、
パンやお弁当の争奪戦になっていた。


意外と人の間をすり抜けることが出来て、
あたしはメロンパンとリンゴのジュースを買って


群れから脱出した。


どうしよう。


百合のとこに行こうか、


でも、邪魔しちゃ悪いよなあ。


教室で独りぼっちで食べるのも気が引ける。


どこで食べようか迷いに迷って、
結局あの空き教室を使うことにした。


空き教室は誰もいなくて、
しんと静まり返っていた。



パンとジュースを机に置いて座る。


ふと、黒板に目をやると、
雑に消されている跡だけが残っていた。


きっとこれは橙輝の絵だ。


立ち上がって黒板の前に立った。


ここに、この黒板いっぱいに広がった
橙輝の絵-。


お世辞とかじゃなくて
本当に素敵だと思った。


それなのにどうして
消してしまったのかな。


残っている絵をそっと撫でると、
指に粉がついて消えた。


「何してんだ?」


ふいに声が聞こえて振り返る。


そこには橙輝がいた。


驚いた顔をして立っている。


手には購買の袋が提げられていた。


「橙輝こそ。どうしたの?」


「俺はここで飯食おうかと」


「偶然ね。あたしもご飯食べに来たのよ」


「……邪魔したな。俺は別なところで食べるよ」


「ちょ、ちょっと待って!」


慌てて止めると、橙輝は
気怠そうな視線を寄越した。