SKETCH BOOK




そう。


全てはお母さんが。


お父さんの寂しそうな
大きな背中が頭の中を過る。


橙輝も机に座って、口を開いた。


「俺のとこは、
 俺が小学一年生の時に離婚した。


 それからはずっと親父と二人だ。


 これからもずっとそうだと思っていた。

 だけど、まさか再婚するなんて思わなかったよ」



ははっと笑う橙輝。


あたしはもう高校生だから、
離婚したってどうってことないけど、


橙輝はまだ小学一年生の頃に
親が離婚したんだ。


きっと当時は
ものすごく辛かっただろうな。


「橙輝はさ、あたしが妹じゃ不満?」


「は?」


「あたしのこと、
 ものすごい顔をして睨みつけるでしょう?
 あたしのどこが気に入らないの?」


「別に、気に入らねぇわけじゃねぇよ」


ふっと笑った橙輝は
あたしから視線を逸らして言った。


「ただ、慣れないなと思って」


そりゃあたしだって同じよ。


急にお兄ちゃんが出来るなんて言われても、
実感がわかないもの。


「あたしも。でも、親同士が
 決めたことならしょうがないよね」


「しょうがない、か……。
 いいな、お前はそういう考え方が出来て」


目を伏せる橙輝。


その双眸はまったく光を宿していなかった。


かわいそうな人ね。


未来に希望も何も
見られないんじゃないかな?


だからこんなに気怠そうで、
いつも一人でいるのかな?


じっと見つめていると、ふいに目が合った。