「もうすぐ授業、始まるよ」


「いい。次は数学だろ。
 受ける必要なんかねぇよ」


「なんで?」


「俺はな、教科書を見ただけで
 分かるんだよ。
 授業なんか聞く必要もない」



橙輝は鼻で笑うとそう言った。


なんだか無性に腹が立つ。


勉強も出来て絵も上手い?


天は二物を与えないんじゃなかったの?


こんなの不公平よ。


あたしなんて
何も取り柄がないんだから……。


「サボるの?」


「ああ」


「ふーん。それじゃああたしも」


「はぁ?」


あたしは一つの机に腰を下ろすと、
橙輝を見た。


橙輝は呆れたような表情をする。


口が半開きになってる。


こうしてみると間抜けだわ。


「ねえ、橙輝のとこはさ、いつ離婚したの?」


「は?」


「あたしんとこはね、
 一昨日離婚届を出したの」


「一昨日?なんだそれ。正気か?」


「うん。お母さんがね、そう決めたのよ」