「何それ……」
「通称ALSと言います。
運動神経系という神経が
選択的に障害される進行性の神経疾患です。
これを見てください。
下位運動ニューロンが障害されると、
筋肉がやせて力が入らなくなります。
上位運動ニューロンの障害がみられると、
腱反射の亢進やバビンスキー反射が認められます。
初期症状は手に現れることが多いですが、
まれに口や足にもみられます。
進行すると徐々に自分の意思で
体を動かすことが難しくなり、
歩行困難になります」
先生の説明が耳に入ってくる。
そう言えば、ヒントはいくらでもあった。
橙輝が最近転ぶようになったこと、
貧血だと言って体の力が抜けること、
その他にもおかしいところは
いっぱいあったのに、気付けなかった。
あんなに一緒にいたのに。
「口や喉が動かなくなると
話す、食べるといった行為が困難になり、
誤嚥する可能性も高くなります。
さらに進行していくと、
自身で呼吸することが出来なくなります」
「それって、つまり……」
死ぬってこと?
「この病気の治療法は今は見つかっておりません。
薬を使って進行を遅らせる治療法を取ります」
「治療法がないって……そんな……」
そんな重い病気にかかっていたなんて知らなかったよ。
橙輝はこのことを知っていたのかな?
とても辛そうな顔をしている。
それならどうしてあたしたちに相談してくれなかったの?
聞きたい事がいっぱいある。
でも、今は混乱して何も言えなかった。
筋萎縮性側索硬化症。
この日、あたしたちの人生は一変した。
雨は止むことを知らずに
その激しさを増していくばかりだった。


