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白い箱の中。
独特の匂いが鼻をつく。
長い廊下はどこか冷たい。
その長い廊下をパパが慌てて走ってきた。
肩で息をして、あたしの前に立つ。
パパはあたしを見て眉を顰めた。
「梓ちゃん。大丈夫か?」
「……うん」
「入るぞ」
「うん」
パパが扉に手をかけて部屋の中に入った。
あたしもそれに合わせてゆっくりと中に入る。
中はすっきりしていて、
小さなテレビと棚。
そしてベッドが置かれていて、
そのベッドの上には橙輝が眠っていた。
「あなた」
「どうだ?様子は」
「まだ、目を覚まさないの」
お母さんが青ざめた顔でそう答えた。
パパは眠っている橙輝のそばに駆け寄ると、
頭を撫でた。
橙輝の体にはいくつもの線が延びていて
難しそうな機械に繫がれていた。
ピ、ピ、と機械音が部屋中に響き渡る。
あたしはずぶ濡れのまま立ち尽くしていた。
橙輝が事故に遭ったと、
お母さんから知らされてから今まで、
あたしはずっとこの調子でいた。
バイクに乗った橙輝は交差点で車とぶつかった。
幸い当たり所はさほど悪くなく、
奇跡的に怪我も少なく済んだらしい。
それなのに橙輝は目を覚まさない。
こんな機械に繫がれている。
一体どうなっているの?
こうなったのは全部あたしのせいだ。
橙輝はきっと飛び出したあたしを
探しに出かけたんだ。
バイクに乗って、視界が悪い中
あたしを探していたんだ。
あたしが飛び出したりしなければきっと、
こうはならなかった。
あたしがあんな変な事を言っていなければ、
橙輝は今ごろ無事だったかもしれないのに。
色んな後悔が押し寄せてくる。
なんだか体中寒い。
雨に濡れたからなのか、今のこの状況に
拒否反応を起こしているだけなのか。
とにかくあたしは寒さに耐えきれずに
自分の体をそっと抱きしめた。


