「好きでいるのも、ダメなの?」
「…………」
「そんなに好きになられちゃ困るの?」
頭がクラクラする。
振られた。
振られたんだ、あたし。
分かっていたじゃない。
こうなることくらい。
それならどうして、兄妹のままで
いられなかったの?
もっともっとと欲しがって、
欲張りになって、
彼女になりたいだなんてそんなこと、
どうして思ってしまったの?
このままの関係でいれば、
きっと一番楽だったのに。
一番楽に、一番
橙輝の近くにいられたのに。
「橙輝の馬鹿!あんたなんか、
お兄ちゃんじゃない!」
「梓!」
「離して!」
掴まれた腕を振り切ると、
机の上に置いてあった、
浩平にもらった香水が
ガシャンと音をたてて床に落ちた。
割れた香水はいい匂いを漂わせる。
浩平の魔法が解ける瞬間が分かった。
もう普通ではいられない。
浩平に支えていてもらった時のようにはいかないんだ。
そのまま自分の部屋を出て、
玄関まで走った。
靴も履かずに扉を開けて走る。
逃げたい。
消えてしまいたい。
恥ずかしすぎて死にそう。
言ってしまったらもう後には戻れない。
修正出来ないこの状況を嘘だと思いたくて、
何かを振り切るように必死に走った。
外はもう土砂降りで、
涙と雨で視界がぼやけていた。
もう、どうしていいか分からない。
なんで勢いで言ってしまったんだろう。
冷静になって考えてみると、
あそこで言うべきじゃなかった。
橙輝は本当にお兄ちゃんとして
あたしを守ってくれただけで、
あたしに特別な感情なんかないんだ。
分かっていたはずなのに、
どうしてあたしは先走ったんだろう。
これからあたしは、
どうやって顔を合わせればいいんだろう。
何も考えられない。
頭がぼうっとする。
あたしはあの家に帰れるのかな?
気付いたら浩平と話した公園まで来ていて、
誰もいるはずもない公園の中に入る。
ブランコに座ると濡れて気持ち悪い感覚がした。
どれくらいいたんだろう。
体が寒さを覚えた時、
誰かが公園に入ってくる音がした。
顔を上げる気力もなくてそのまま俯いていると、
雨が体に当たらなくなった。
「梓?」
「こ、浩平?」
顔を上げると、傘を差しだす浩平が立っていた。
浩平は驚いた顔をしてあたしを見ていた。


