それからというもの。


綾子たちからの嫌がらせは続いた。


くだらなすぎるもんだから
堪えることは容易だった。


だけど、あたしはあれから
橙輝のことを避けまくっていた。


橙輝に話しかけられても
素っ気ない態度を取り、


なるべく橙輝と顔を合わせないようにした。


橙輝は不思議そうにしていたけれど、
特に何かをいってくることもなく、


あたしはもうそれが
当たり前のようになっていた。


それでも嫌がらせは続いて、
だんだん疲れてくるようになった。


いつまで続くの。


あたしは橙輝を避けているっていうのに、
一体何が気に入らないのよ。


「なあ、梓」


「な、なに?」


家に帰って来て、橙輝は
あたしの部屋を訪ねた。


あたしは教科書を開いて
いかにも勉強していますよとアピールする。


橙輝があたしの隣に座った。


「最近、なんか素っ気なくねぇ?
 俺、なんかしたか?」


「別に。普通でしょ」


「ふーん。そうか」


ごめん、橙輝。


あんたは何も悪い事してないんだけど、
でもしょうがないのよ。


こうでもしなきゃ綾子たちがうるさいもの。


避ける癖がいつの間にか家の中でもついてしまって、
どうしようもない。


橙輝はあたしの開いていたノートの端に
可愛いクマのキャラクターを書き始めた。


それが気になってつい手を止めてしまう。


橙輝の描いた絵はパラパラ漫画になっていて、
放っておいたらいつの間にか一つの作品が出来上がっていた。


「何してんの」


「んー。梓が構ってくれないからいたずらしてんの」


「なにそれ」


「お前さ、なんかあった?」


「な、なんかって?」


「元気ない」


ドキッとした。


バレてるの?


いつも通り振る舞っていたはずなのに、
橙輝はちょっとした変化も見逃さなかった。


あたしをじっと見つめて、
真剣な顔つきで聞いてくる。


そう言われると弱音を吐きたくなっちゃうじゃない。


ずるいよ、橙輝。


あんたのことでもめてるなんて知りもしないでさ。


あたしがどれだけ気を遣っていると思っているのよ。