「あんたずるいのよ。
 松田くんを好きな子も
 鳴海くんを好きな子もいたのに、
 あんただけ構われて。


 松田くん、好きな人がいるって言ったけど嘘でしょ?
 本当はあんたが鳴海くんに乗り換えただけでしょう?」


浩平のついてくれた嘘が崩れる。


浩平はきっとこうなることを恐れて
嘘をついてくれたんだ。


今になって浩平の優しさが身に染みる。


「好きなの?」


「す、好きじゃないよ」


「じゃあ近づかないでくれる?目障りなのよ」


ちょっと前まで仲良く喋っていたのに、目障りかぁ。


女子ってこういうとこ面倒くさい。


ドロドロしていて、しょうもなくて、
呆れるくらい複雑。


好きな人が絡むと尚更性格の悪さが浮き出てくる。


それも男子にバレないようにやるから悪質だ。


あたしは綾子と胡桃を交互に見つめた。


胡桃は女の子らしく泣いていて、目が潤んでいる。


そんなに好きか。橙輝のことが。


でも、あたしだって好きなのよ。


皆には言えないけど、
あたしだって誰にも負けないくらい
橙輝のことが好きなのよ。


言えないのが辛い。


このもどかしさが苦しい。


ここであたしが好きだって認めたら、
少しは楽になるのかな。


好きだって言えれば、
綾子たちも納得するのかな。


どうすればいいのか分からない。


どうすればあたしは正解を出せるの?


どうすれば穏便に事が運ぶの?