橙輝は椅子の背もたれに
体を預けてそう言った。


「まあ、何でもいいけど、
 俺には構うなよ。迷惑だから」



迷惑?


なんて言い草。


これから兄妹になるっていうのに!


「はいはい。そうですか」


橙輝の背中に舌を突き出して見せて、
あたしは思い切り強くドアを閉めた。


全く。


少し格好いいからって
調子に乗るんじゃないよ。


いくら顔がよくてもあれじゃあダメだ。


もっと人当たり良い性格でないと。





自分の部屋に戻って、
ベッドに身を投げる。


橙輝の部屋から時折聞こえる物音を
耳に残しながら、


あたしはだんだんと眠りに落ちていった。





新しい家族。


あたしにはまだ受け入れがたいことだけれど、


この先上手くやっていけるのかな。


新しいパパと、橙輝というお兄ちゃんと、
四人で暮らしていくイメージが湧かない。


それでもあたしは、あと六か月もしたら
「鳴海梓」になるんだ。


それだけは揺るがないことなんだ。


そう想うとなんだか複雑で、

悲しいような、寂しいような……

楽しみで仕方ないというような、


そんな気持ちになった。