橙輝は絵を見て呆然としていた。
ただ拳を握りしめて、絵を見つめていた。
その姿が痛々しくてとても見ていられなかった。
橙輝がかわいそう。
見せ物じゃないのに。
これは橙輝の思い出と、
希望と、叶うことの無い夢なのに。
「麻美……」
ポツリと橙輝が呟いた時、
あたしの体は動いた。
壁に貼られていた絵を全部剥ぎ取り、
橙輝の手を引いて歩き出す。
あの空き教室まで来ると
ドアを閉めて鍵をかけた。
橙輝はぼうっとして立ち尽くしている。
あたしは取ってきた絵を広げてその絵を撫でた。
「ごめんね。橙輝」
「なんで、お前が謝んの」
「だって、あたし、こんなことしか出来なくて」
「謝るなよ」
「嫌だったよね。悲しいよね。
橙輝だけのものなのに」
この絵は、橙輝だけのものよ。
他の誰でもない、橙輝の大切な絵よ。
あたしでさえ、見ることの許されない絵なのよ。
それなのに、あんな形で広まってしまうなんて。
「あんなの、ただの絵だ」
「でも!」
「ただの、絵、だよ……」
橙輝の声が震えた。
あたしは橙輝の手をそっと握った。
その手も、震えていた。


