「なんだよ」
「ちょっと見てるだけ。
ねえ、この絵、すごく素敵ね」
その絵は、夕焼けの差し込む
教室の絵だった。
その絵の中にたった一人、
女の子が写っていた。
誰だろう。
その人はとても長い黒髪で、
窓の外を見つめる彼女の横顔は、
夕日のせいで陰になっているのか、
あまり表情は分からなかった。
けれど美しい人だっていうのは分かる。
頬杖をついて窓の外を眺める彼女。
それがとても愁いを帯びていた。
「なんだよ。急に入ってきて。
邪魔だから出て行けよ」
「な、なによそれ。仮にも
妹になる人に向かってそんなこと――」
「俺、お前の兄貴じゃねぇから」
うう。
言われたくないことを言われてしまった。
確かに赤の他人だけど、一応
お母さんたちは再婚するわけだから、
妹になるのよね?
橙輝は再婚に反対なのかな。
あたしが脹れていると、
橙輝はあたしを見た。
「お前、嫌じゃねぇの?親が再婚って」
「えっ?」
「俺は嫌だね。大人の都合で
勝手に何もかも決めやがって」