それは突然やってきた。


いや、前々から知ってはいたから、
突然ではないんだけど。


学校も始まって少し経ったある日、
晩御飯を四人で食べている時のことだった。


「ママたちね、明日、籍入れるから」


「はっ?」


思わず手を止めてお母さんを見る。


お母さんとパパは嬉しそうに
見つめ合っていた。


今、なんて?


「だから、ママたち、とうとう結婚するの」


「へ、へぇ~。そうなんだ」


驚きを隠せないでいると、
橙輝も驚いたように目を丸くして
二人を見ていた。


そうよね。


いきなりすぎるもん。


この二人。


前から九月に結婚するって
言われていたけれど、


まさか明日だなんて思わなかった。


だってまだ九月に入ったばっかりなのに。


お母さんは立ち上がって
棚から紙を取り出した。


初めて見る婚姻届け。


もう名前が記入されていた。


いつの間にこんなの用意していたのよ。


ちゃっかりやることはやっているんだから。


「梓は学校では百瀬のままだからね」


「なんで?」


「面倒くさいじゃない。
 先生には全てお話してあるから、
 このことは橙輝くんとだけの秘密よ?ね?」


「分かったけど……」


「橙輝くん、明日から改めてよろしくね!」


「ああ、はい」


橙輝はぺこりと頭を下げて、
再びご飯を食べ始めた。


ちょっと、それだけ?


結構重要なことじゃない。


みんなそんなノリなの?


うちの人達は能天気ね。


複雑なのはあたしだけか。


なんだか悲しい。