SKETCH BOOK







あれからというもの。


相変わらず浩平と勉強の日々は続いた。


あの日のことは何もなかったかのように振る舞えている。


浩平も優しくて、
いつもの明るい浩平だった。


傍から見れば順風満帆。


ごくごく普通のカップルそのものだった。


「俺、明日から家族で旅行なんだよね」


ある日、浩平がそんなことを言い出した。


「旅行?どこに?」


「イタリアに。五日くらいね」


「そっか。楽しんできてね」


「おう。お土産、買ってくるからさ」


「うん」


旅行かぁ。


いいなぁ。


海外旅行。


あたしも行きたいなぁ。


そんなことを思いながら、浩平と別れた。


家に着いて玄関で靴を脱ぐ。


リビングに行ってソファに身を沈めた。


今日も勉強、疲れたなぁ。


そろそろ成績が上がってもいい頃なんだけれど、
なかなかあたしの成績は上がらない。


学校で受けているテストだって全然出来ない。


あたしの頭の悪さを呪う。


どうしてこんなに出来ないのかなぁ。


ちょっとは勉強できるようになりたい。


ため息をついてぼーっと天井を眺めていると、
ガチャッと玄関の開く音がした。


誰か帰ってきた。


誰だろう。


お母さんかな?