SKETCH BOOK




「し、進展って」


「キス、してもいい?」


「き、キス?」


いいよ、なんて言えなくて俯いてしまう。


頬が熱い。


どうしていいか分からなくなる。


でも、そうだよね。


付き合っていればキスするのが当たり前で、
当たり前に浩平だってしたいと思うし、


それは当然あたしも同じで……


同じ?


「いい?」


「う、あ、えっと……」



どんどん、ゆっくり顔が近づいてくる。


すると、突然あの時の橙輝を思い出した。


無理やりキスをされ、
弄ばれたあの時のことを。


途端に全身の熱が上がる。


そう言えばキス、したことあるんだ、あたし。


でも、これはあの時とは違って、
ちゃんと気持ちのあるキスだよね?


あたしにとって初めてのキス、だよね?


そう思うとなんだか特別で、緊張する。


浩平の目が大人っぽい。


大人っぽいというか、妖艶というか。


ゆっくり目が閉じられる。


本当にキス、するんだよね?


したらあたし、何かが変わるかな?




浩平とのキスを受け入れるつもりで
キュッと目を閉じた。


つもりだった。