SKETCH BOOK




橙輝と公園前で分かれると、
浩平は公園の中に入っていく。


その後ろをついていくと、
浩平はブランコに座るように促した。


ブランコなんて小学生ぶり。


浴衣を崩さないようにそっと座ると、
その後ろに浩平が立ち上がったまま乗った。


「うわっ」


「はは。びっくりした?」


「びっくりした!もう、何さ~」


風が気持ちいい。


少し蒸し暑いから流れてくる風は生ぬるい。


浩平が力いっぱい漕ぐものだから
ブランコが揺れる。


あたしは目を閉じてその風を受けていた。


「今日、楽しかった?」


「うん。楽しかったよ。ありがとう」


「そっか。ならいいんだ」


やっぱりあたしのこと、
気にしてくれていたんだ。


友達が出来ないあたしを心配して、
輪の中に入るきっかけをくれた浩平は


やっぱり素敵な彼氏だと思う。


ふと、浩平は漕ぐのを止めて
ブランコから降りた。


そしてあたしの目の前に立つ。


見下ろされる形になったあたしは
顔をあげて浩平を見た。


「何?」


「梓。綺麗だよ」


「あ、ありがとう」


「俺たち、付き合って
 そろそろ二か月になるじゃん?」


「う、うん」


「そろそろ進展が欲しいわけですよ。
 俺としては」


進展とは?


妙に真剣な面持ちをしている浩平の目はとても鋭い。


それでいてどこか甘くて、
切なげに光っている。


今の浩平はいつにも増して大人っぽい。


なんで?


お祭りだから?


みたこともない浩平の顔があって
少しだけ戸惑う。