SKETCH BOOK




彼女、かぁ。


胡桃みたいに可愛い子が彼女になったら、
橙輝はあんな風に笑うのかな。


パパみたいな柔らかい笑顔を、
彼女にも見せるのかな。


麻美さんはどうなるのかな。


橙輝に彼女が出来る時は、
きっと麻美さんを忘れられた時だよね。


そうしたらきっと、あの絵の中に映るのは
麻美さんじゃなくて、彼女の姿になるのかな。


そんなことを考えているうちに、
お祭りはお開きになって、


みんなは集合した場所まで戻ってきた。


橙輝も絵を描き終えて
輪の中に入っている。


そんな様子をじっと眺めていた。


「じゃ、帰りますか」


「あー、楽しかった」


「また集まりたいね」


「今度はもっと大人数で集まろうな」


「じゃ、また二学期にね」


また、三人になる。


夜もだいぶ更けてきた頃、
あたしの下駄の音だけが夜の街に響いていた。


浩平が楽しそうに話をしていて、
それに橙輝が相槌を打つ。


そんな二人を後ろから眺めているだけだった。


「な、梓」


「へっ?」


「だから、ちょっと二人で話そうよ」


「あ、うん」