SKETCH BOOK




夏祭りはだいぶ人で溢れていて、
ついていくのに必死だった。


時折浩平が手を握ってくれて
なんとかついていけた。


それを見ていたみんなが
あたしと浩平の仲に気付いた。


「え、梓ちゃんと松田って付き合ってるの?」


「え、あ、えっと」


「うん。俺の彼女です」


「えー!いつの間に?お似合いだなぁ」


「何処までいったの?キスはした?」


「え、ま、まだ……」


「ヒュー。松田男見せろよ~」


「うるせぇな!お前ら散れ!」


珍しく浩平が照れている。


顔を真っ赤にさせてみんなと喋っている。


その様子を眺めていると、
ふと横目に橙輝の姿が見えた。


輪の中には入らずにスケッチブックを開いている。


そんな橙輝のもとに駆け寄る姿があった。


あれは確か……横沢胡桃。


胡桃は橙輝の隣に座ると
嬉しそうに話し出した。


何を言っているのかは
ここからじゃ聞こえない。


橙輝は胡桃には目もくれずに
サラサラと鉛筆を動かしている。


それでも時折、薄く笑みを見せる橙輝を見て、
少し寂しくなった。