SKETCH BOOK




「その顔久しぶりに見た。可愛いなあ」


「可愛くないわよ!浩平の嘘つき!」


「なんで俺まで睨むんだよ」


三人でわあわあやっていると、
みんながあたしたちに近寄ってきた。


「百瀬さん、浴衣可愛い」


「えっ?」


「ね!羨ましいなぁ。浴衣。似合ってる」


「髪型も素敵!」


女の子たちがあたしの周りに集まって、
そんなことを言う。


何がどうなっているの?


あたしはクラスで浮いてて、
誰も近寄ってこなかったのに。


不安げに浩平を見つめると、
浩平は頷いて笑う。


もしかして、浩平はこのために……?


「あ、ありがとう」


「ねえ、梓ちゃんって呼んでいい?」


「う、うん」


「私のことは綾子でいいよ」


「うちは美香」


「彩音ね」


「桃花」


「夏美」


ちょっと待って。


いきなり名前を言われても
すぐには覚えられないよ。



あたし、やっていけるか不安。


友達ってこんなに難しかったっけ?


ずっと百合とだけ仲が良かったから忘れていた。


友達ってこんな感じ。


なんだかくすぐったい。


あたしがみんなの輪の中に入れている。


それが素直に嬉しくて。