「似合っているわ。梓。
橙輝くんはこんなことも出来るのねぇ」
「まあ、美容師になりたかったんで」
「えっ、美容師?」
「ああ」
知らなかった。
てっきり絵の仕事に就きたいのかと思っていたから。
まさか美容師志望だったなんて。
だからこんなに手馴れているのか。
納得。
「橙輝くんがいれば安心ね。
楽しんでくるのよ」
「うん」
「百瀬、こんな時間だ。行くぞ」
「はーい」
浩平との約束の時間になって、
あたしと橙輝は一緒に家を出た。
家の前では浩平が待っていて、
ちょっと寂しそうな顔で笑った。
「じゃ、行こうか」
「うん」
「ああ」
三人並んで集合場所の神社まで歩く。
カランコロンと下駄を鳴らして歩く
あたしのスピードに、
二人は合わせて歩いてくれた。
「梓、辛くない?」
「うん。大丈夫」
「そっか。なら良かった」
「あーあ。何が楽しくて
カップルと一緒に
祭りに行かなきゃならねぇんだ」
橙輝が悪態をつく。
そんな言い方しなくてもいいのに。
そんなに嫌なら家で待っていればいいじゃない。
むぅっと脹れていると、浩平が笑った。
「あはは。鳴海も彼女作ればいいだろ」


