高校の入学式で、
あたしは運命を感じた。


隣の席に座る男の子の横顔に、
心を奪われた。


つり眉たれ目のその人は、
必死に机にかじりついていた。


「梓!クラスどう?慣れそう?」


隣のクラスから顔を出したのは
中学からの親友、塚本百合。


百合はあたしのクラスに顔を覗かせると、
ちらっと隣を見て囁いた。


「ねえ、隣の子、結構
 かっこいいんじゃない?」



「え、そうかな?」


「アンタ、彼氏欲しいって
 言っていたわよね?チャンスじゃない?」


「ちょっと、茶化さないでよ。
 あたしは本気なんだから!」


「だから、チャンスじゃないの。
 アタックしてみたら?」





百合のやつ……。


彼氏いるからっていつも余裕なんだから。


百合は中学の頃から付き合っている彼氏がいる。


同じ高校に入学して、同じクラスで……。


いいなぁ、百合は。


華の高校生活のスタートじゃない。


あたしなんか誰も知らないこの教室で
うまくやっていけるかどうか分からないっていうのに……。


「まあ、後でまた寄るからさ。
 今日は一緒に帰ろう?」


「うん、分かった」