10月
今年の秋は少し肌寒い
私は、専門学生の栗城 咲綾(くりき さあや)
20歳。
「ただいま〜」
重たいリュックをドカッと下ろすと、
即座にソファーに飛び込む
「おかえり。咲綾、今日はいいところあったか?」
台所に立ち皿洗いをしているのは私の父だ。
「んー?いや、いいところないさー」
最近はいつもお決まりのこのパターン
父が心配して聞くのは私の就職先のこと
今年の求人は去年に比べてものすごく少ない。
だから、このまま卒業してしまうのではないかと心配しているのだ。
「求人ちらほら来てるけど、遠いところだし、家から通えないし」
「それなら自動車の免許取りに行けばいいだろ?」
「車ー?」
「いくら自宅から通えるって言っても今時、車ないときついだろう」
「田舎だもんね」
そう。私が住んでいるのは北海道。
1か月前に訳あって引っ越した
って言っても引っ越したのは前の家から数キロ先しか変わらないんだけどね。
でも、車かぁ…
『 3人で入校して、3人で卒業すれば怖いもんないしょ!! 』
そんな話してたっけな…
気づいたら1人が先に入校して、もう1人の友達も1か月後に入校していた
就活も考えないといけないけど、
免許…取らなきゃな…