「この製品はあの会社のあのシステムでしか作れないものだったの。それに従業員の技術も必要。高宮からは撤退しても経営を縮小して製品の取引ルートさえ確保すればもう少し継続させられると思うの。再雇用先に行くのも経営縮小して継続するのも選ぶ権利があるはずでしょ?」




「あの製品を使ってくれそうな企業にあたってみる。栞菜は製品の分かりやすい資料と取引額、最近の帳簿を見て概算だして」




「はい」




あまりに懸命な栞菜に啓吾はネクタイを緩めさっそく動き出した。





「鈴木自動車で似た製品を取り扱ってるけど製造が中止になるらしい。取引相手に需要がないか確認中だ。坂本重工では同一製品がまだ使われていて需要がある。ただ製品自体生産性が低くてルートが細いな。」




「帳簿を見直して経営縮小の為に需要の少ない製品の製造だけ中止にする方向で考えてるけど資材のコストを落とすのは難しそう。むしろコストが上がりそうなものばかりだから販売価格をあげるしかなさそう。」




「資材関係は高宮の営業に顔が利くルートの広い山田っていう社員がいるから連絡してみるといい」




「わかった」



立ち上がり電話に手を伸ばそうとした栞菜の体がグラッとゆれた。