あれから9年




短大を卒業し藤崎財閥の秘書課に勤めて7年




社長室に呼ばれた栞菜はすっかりタイトなスーツとハイヒールの似合う女性になっていた




慣れた足どりで社長室の前に立ち、慣れた手つきで社長室の扉をノックする



「失礼致します。お呼びでしょうか。」




「よそよそしいな、栞菜。」




社長である藤崎英治は顔をしわくちゃにして微笑んでいる。




「ここでは社長と秘書ですから。」




栞菜も微笑み返すと英治は立ち上がり栞菜のもとへと歩み寄った。



「いよいよ啓吾が戻ってくる。」




「はい。」




「覚悟は決まったか?」



「はい。そのためにこうして修行させていただいていますから。」




愛想笑いを浮かべる栞菜の頭を英治はぽんぽんと撫でた。