「舞子、そろそろ授業始まっちゃうよ。席戻らないの?」


 私はそう言って立ち上がった。


「え?あぁ、うん…」


 自分の声が聞こえていなかったのが不満なのか、舞子は首をかしげてしかめっ面。


 性格の悪さは心の中までにしとけよ。


 舞子は肩を落として自分の席に戻っていった。


「最近、蛍来ないなー」


 授業が始まる3分前、私の前の席の女子が、いきなり大きくため息をついた。


「ホタル…?ここ都会だよね?」


 虫の名前が出てきて、私はつい口に出してしまった。