取り残された舞子は、私に聞こえる声で「私、緑色が好きなんだけどな…」
とつぶやいた。


 優希が言ってた「緑が好き」っていうのは、舞子の事だったんだ。


 まあ、紫色より緑の方がまだマシだけど。


 私は、不細工で地味な舞子と一緒にされた事に腹が立った。


 鞄の小さいポケットの中に入ってあるストラップを、しばらく睨みつけた。


 ストラップは、身動きもせずただじっとしているだけだった。


「…可愛くないなぁ」


 私は、誰にも気づかれないよう小さくつぶやいた。